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オープン・フェア・ベスト - Column - リスク共生社会創造センター|横浜国立大学

Column

Column 01 リスク共生の視点から新型コロナ対応を考える

重症化リスクの計量について第2回(2020.05.22 掲載)オープン・フェア・ベスト

著者:大重 賢治横浜国立大学 保健管理センター 教授

トリアージ

トリアージは、19世紀のヨーロッパで、戦場において負傷者の手当てにつき、階級にかかわらず

  • 治療を施しても死亡すると思われる者
  • 治療を今すぐしなくても生存する者
  • 今、治療しないと死亡する者

に選別し、「03に該当する者の治療を優先」させたことが始まりとされる。
トリアージというと、助からないものを見捨てるイメージが付きまとうが、そういうわけではない。配分的正義を達成するための一つの手段である(01。 横浜市では、2008年から救急通報(119番)受信時にコールトリアージが実施されているが、生命の危険が迫っているものに手厚く対応するという方針が貫かれている。救急車が出動しないためのトリアージは行われていない。優先的出動(Priority dispatch)と表現した方が良いように個人的には思う。

傷病者に対するトリアージは、その判断を行う人(通常、知識と経験が豊富な医師)に対しての信頼がなければ成り立たない。それと同様、地域救急体制におけるトリアージシステムも、そのシステムに対する信頼がなければ住民から受け入れられない。信頼を得るためには、「オープン」、「フェア」、「ベスト」の原則に従うことが最良である(01

「オープン」に関して言うと、横浜市のコールトリアージ導入とその実施にあたっては、そのコンセプトや方法、トライアルの結果、および導入後の結果等が積極的に公開された(01〜05。 一方で、救急搬送患者のデータは、救急通報受信時に自動的に割り付けられる救急事案番号を用いて扱われ、個人が特定されるような情報の取り扱いに関しては最大限の注意が払われた。

トリアージの基準は、横浜市で実際に発生した救急事案のデータを集計・解析し、それを元に横浜市消防局内に設置されたプロジェクトチーム内で議論され作成された。常に科学的な妥当性を求めることで「フェア」を確保した。トリアージのアルゴリズムを公開し、運用後も検証し続ける仕組みも作られた。運用開始後の実際に使用されるトリアージ端末には、トリアージ判定を行いながら、自動的にデータが蓄積されるような機能を持たせた(写真)。蓄積されたデータを再解析し、アルゴリズムを何度も見直すことで「ベスト」を達成できるようにした。

コールトリアージ風景タッチパネルに通報情報を入力することによって、リアルタイムにトリアージ結果が表示され、入力情報は自動的にデジタルデータとして蓄積される(横浜市安全管理局(現消防局)司令センター 2008年11月撮影)。

参考文献