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「よい意思決定、わるい意思決定①」 - Column - リスク共生社会創造センター|横浜国立大学

Column

Column 04 リスク共生対話 

リスク共生×国際経営論(第2シリーズ)第9回(2024.12.11 掲載)「よい意思決定、わるい意思決定①」

対談:周佐喜和/澁谷忠弘 聞き手:伊里友一朗

伊里:
 リスク共生(学)に対する期待の一 つに、 リスク共生を未来予測の新しい技術として使いたいというのがあると思います。いわゆる予測学のように、いかにこれから起こる未来をズバリ正確に当てるフレームワークを提供してほしいというもの。これは人々の切実な願いであることは理解するのですが、この方向は筋が悪いと私は思っています。結局、未来は予測できないものだと思うのです。

 その次はたぶん意思決定理論、 すなわち “正しい” 意思決定にリスク共生学を使いたいというものです。野口先生もリスクマネジメントは後悔しないためにやるものだ、と述べられることが多かったと思います。

 この意思決定に関して伺いたいのですが、経営学における意思決定に関する考え方について、ご紹介いただけますか。

周佐:
 意思決定が良いのか悪いのかを評価する基準については、人によって考え方の違いがありますね。伝統的な経済学をやっている人は、良い意思決定か悪い意思決定かを区別する基準は、合理性だと考えます。企業などの組織が競合相手(他者)より良い成果を挙げるためには、やはり他者と差を付けないといけない、そのためには他者と違うことをして、差を付けないといけないと考えるのが普通だと思いますね。重要な意思決定ほどそうするべきだ、だから熟考しなさいと。でも、実際には、他者との違いがどこなのかちっとも見えてこない、安易と思える意思決定が実に多い。この点を突いた痛快な本があります。ルメルトという有名な人がいて、2冊くらい本を書いているけれども、最初のほうの『良い戦略、悪い戦略』という本です。

伊里:
 読んだことがあります。

周佐:
 あれの世界です。そこではコーネル大学の事例を引いて、大学の意思決定はかなり空虚だと書いてあります。もう、こき下ろしています。要約すると、自分たちコーネル大学は素晴らしい大学ですと言いたいらしいが、言ってることの中身は、自分たちコーネル大学は大学だということ以上ではないよねと。大学であれば先進性や国際性を重視するなどは、誰でも考えるようなことで、それをわざわざ言ったところで「コーネル大学は大学である」という以上の説明になっていない。要するに他と差が付いていないのです。

 学生にも授業で言っているのですが、大学のホームページに書かれているビジョンを見るとみんな似たりよったりで面白いですよね。これでは、他者と横並びで差がつかずに泥沼競争に陥ることは目に見えているので、合理性という基準に照らすと駄目な意思決定としか言えないというわけです。難しいですよね。でも、どうしてもそうなってしまうのです。


伊里

 大学ランキングもそういう仕組みですよね。結局、ある評価指標で評価していくと、結果的にみんな似たりよったりの大学ばかりになってしまう。

周佐:
 その中で、エイヤで基準を付けてやっているわけですよね。

 だから、分かりやすい基準をつくろうとすると、金をどこがたくさん持っているか、というふうな基準になってしまう。そういう人がおっしゃることはよく分かります。商売をやりたい時にはね。でも、最高の知性を集めたはずの大学だって商売をするのは下手なのです。アメリカの大学といえども。他者との違いを出そうとして合理的に考えているようでも、結局、どこも同じに見えてしまう意思決定をやっている。