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近年の韓国産業安全について〜重大災害処罰法の紹介〜 - Column - 次世代工学システムの安全科学研究ユニット|横浜国立大学

Column

Column 02 安全安心における一考察

第1回(2022.10.31 掲載)近年の韓国産業安全について〜重大災害処罰法の紹介〜

金 東俊横浜国立大学 先端科学高等研究院 客員准教授

 近年韓国では絶えずに発生する産業災害により、労働者の安全管理に関する関心がますます高まっている。昨年には、産業安全に関する社会的な要求により ‘重大災害処罰等に関する法律(重大災害処罰法) ’ という新しい法律が施行され、産業現場ではこの法律に関する関心が高い。

 この法律のきっかけは、2018年12月10日夜、一人の労働者が死亡する災害発生から始まる。死亡災害は直ちにマスコミに大きく取り上げられることとなった。

 主な内容は、下請け会社の労働者に対する過酷な勤務環境(安全管理の問題)と真面目な性格で家計を支えていた24歳若者の生活に関することだった。韓国の社会全般に根深く残っている親事業者と下請け事業者の不当な関係が大きな話題になった。裁判の結果も、労働者の立場から見るとかなり失望的な結果になった。

 社会的に、親事業者に責任を問う声が大きくなり、2021年1月8日に‘重大災害処罰法’が国会を通過した。一年後である2022年1月27日から施行された。既存の産業安全保健法(≃日本の労働安全衛生法)と大まかには類似している項目が多いが、主な違いは、下請け会社の重大災害に対しても、直接に親会社の経営責任者に、安全管理の責任を負わせる内容である。

 この法律の施行により重大災害が発生した場合、 親会社の経営責任者に懲役又は罰金(両方が課されることも可能)にすることができる。経営責任者に対する厳しい処罰になり、 経営者からは、反対の声が高く、労働者からは歓迎の声が高い。

 理想的な産業安全は、法令準拠型ではなく、事業者により自主的な安全管理を行わければならないことであろう。従って、一部の高いレベルの安全管理を行っている企業にとっては、足枷になることを心配している。

 それにも関わらず、この法律が国民多数の支持を受ける理由は、安全より生産を大切にするあまり、大多数の事業所で最低限の安全を保つための法律すら守られていなかったからであろう。安全専門家の間でも是非の議論は多いが、以前よりは、経営者が安全管理に関心を持つようになったことを大きく評価している。

 法令準拠型の安全管理では、社会の変化および産業技術発達の速度を追従していくことは難しくなるが、まず、経営責任者が安全を第一に認識してもらうことで、 重大災害処罰法の役割が果たされることを期待する。

 勿論、法律による安全管理には限界があり、状況の改善によりいずれ規則緩和することも考えられる。完璧な法律はあり得ず、今後この法律によりいくつかの問題が発生することは間違いないだろう。今、この法律の是非を論じることよりは、問題点が見つかった時に素早く改善していくことが重要であろう。

 しばらくは、この重大災害処罰法により、韓国社会がどのように変化していくかを絶えず関心を持ち続けなければならないだろう。

 大勢の経営責任者が法律に追い立てられて行う安全管理ではなく、労働者の災害予防に焦点を合わせた安全管理を期待する。

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