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今年度の研究進捗状況について

5−1.事故時などのフィジカルリスク情報の整備とその効率的活用

本サブテーマ研究では、事故時などの化学物質のフィジカルリスクを想定した高フィジカルハザード物質データベースを構築するとともに、フィジカルリスクと連携した新たな情報プラットホームとこれを活用したフィジカルリスクの評価ツールを整理・開発します。

今年度は、DIPPR、CAMEO Chemicals等をはじめ5種類以上のフィジカルリスクに関する既存の化学物質危険性・物性情報データベースを収集・整理しています。また、フィジカルリスクに関連した既存情報の整理から、ライフサイクルリスク評価を行うために重要な情報を明確化し、その情報が存在するかまた利用可能かを整理しています。来年度以降は、総合化学物質管理のためにミッシングリンクとなっているフィジカルリスク情報を、毒性情報等にリンクさせるためのフェーズ合わせの検討を行います。

5−2.短期・長期健康リスク情報の整理とその効率的活用

本サブテーマ研究では、化学物質の長期・短期健康リスクを想定した既存の高毒性ハザード物質データベースを整理・有効活用するとともに、不足する情報については補間し、フィジカルリスクと連携した新たな情報プラットホームを構築するとともに、これを活用して環境管理を促進するための長期・短期健康リスク評価ツールを整理、改善、開発します。

今年度は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の化学物質総合情報提供システム(CHRIP)等の既存の情報プラットホームを収集・整理し、有効活用するとともに、従来の情報データベースではミッシングリンクとなっている急性・亜急性毒性情報の収集・整理を行っています。急性・亜急性毒性情報についてGHS、AEGL(急性曝露ガイドラインレベル:US.EPA)およびAETL(急性曝露閾値レベル:EU)等では、92種類の情報源が用いられています。GHSやAEGLでは、表1に示すようにそれらの情報源について採用の優先順位が定められており、本プロジェクトでも、各機関で優先順位が高いと判定されている情報源から情報の収集・整理を行っています。情報源の採用基準は、@国際機関、主要各国の公的機関等で作成されている、A国際的に受け入れられているガイドラインに従っている、B一次資料に遡ることができ情報の確からしさを確認できる、などとされています。

また、独立行政法人産業総合研究所の詳細リスク評価書などで従来考慮されてきた曝露シナリオは、定常的な環境への排出からの曝露が主でした。化学物質トータルリスクを評価するためには、補間すべき曝露シナリオを明確化し、収集・整理する必要がある。今年度から来年度以降にかけて行う網羅的な曝露シナリオデータベースの構築では、主にサブテーマ1、2が連携して、@生産・加工時の作業者及び周辺住民への曝露、A室内使用時の住民への曝露、B廃棄・リサイクル時の作業者及び周辺住民への曝露、C火災・漏洩事故等の非定常時の作業者及び周辺住民への曝露について整理します。

表1 情報源の調査の例(有害性情報)
表1 情報源の調査の例(有害性情報)
表2 化学物質の曝露シナリオデータベースのイメージ表2 化学物質の曝露シナリオデータベースのイメージ

5−3.高懸念物質のライフサイクルリスク評価に必要な情報整備と考え方の構築

本サブテーマ研究では、国内外の先行事例の考え方も参考に、ライフサイクルリスクの評価に必要な情報の検討、情報の収集方法の検討等を行い、またサブテーマ1および2の研究参画者と連携するとともに、収集した情報を活用して、高リスクであることが懸念される物質を選定し、具体的な事例を検討しながらライフサイクルリスクの評価方法の考え方を構築する。本評価手法は、フィジカルリスクおよび短期・長期毒性まで考慮した、従来の研究では考慮されていないミッシングリンクを繋げる新たな取り組みであり、化学物質のトータルリスク管理のために有意義な研究成果となることが期待できます。

ライフサイクルにわたる曝露情報については限られた情報しか得られないことが想定されるため、今年度は、@どこにどのような情報が存在して入手可能であるのか、Aどのような手法により推算可能であるのか等を調査、検討しはじめています。また、リスクが高く、比較的十分な情報が存在する化学物質(産総研詳細リスク評価結果等を活用し、評価済み物質等)や、身の回りで多用される製品中の化学物質(製品評価技術基盤機構等の既存データベースを活用し、塗料、プラスチック等)を評価対象物質として選定を行っているところです。今年度から来年度以降、用途、流通、廃棄等のライフサイクルにおける特徴が異なる複数物質を対象として取り組むことを想定しながら、全体がつながったライフサイクルリスク評価の代表例を作成します。

5−4.構築する情報プラットホームの概略

本プロジェクトでは、各サブテーマで収集・整理できた情報から、トータルリスク評価に必要な情報を明確にし、さらにその情報を利用しやすいように収集できる情報統合プラットホームを構築することとしています。今年度は情報プラットホーム(図3)の概念設計を行っています。

図3 化学物質トータルリスクの評価のための情報プラットホーム
図3 化学物質トータルリスクの評価のための情報プラットホーム

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