リスク共生社会創造センター

2020年4月22日

リスク共生の視点から見た新型コロナ対応

(第3回) 危機時におけるリスクマネジメント その2
リスクを分析する前に整理すべきこと
~リスクは状況によって変化する~

横浜国立大学 IASリスク共生社会創造センター
客員教授(前センター長)  野口 和彦


前報では、リスクを特定する危機状況を共有せよという提言を行ったが、今回は、その状況を把握するための要点を以下に整理する。


リスクを考える前にこれから先の組織内外の状況の変化を想定せよ

リスクは、その環境状況によって変化する。したがって、リスクを分析する前に、今後の環境の変化を想定する必要がある。

新型コロナウィルスの影響が一ヶ月で収まるか、三ヶ月か、一年以上かかるかで、準備や対応のレベルが異なってくる。

危機時には、楽観的な見通しで、状況を予測してはならない。

これから先の見通しが不透明な時ほど、悲観的な見通し、楽観的な見通し、可能性が多岐と想定される見通しの、3種類を行う必要がある。

複数の見通しを行うことで、状況の変化の見方によって、何の状況が対応に大きな影響を与えるかを知ることもできる。

これらの見通しを行う際には、必ずしもその根拠がすべてあるとは限らない。社会の様々な意見から、どのような状況まで考えるかは、組織リーダーの組織運営の方針による。

自組織の活動が重要であればあるほど、可能性は低くても重要な状況変化を前提とする必要がある。厳しい状況を想定すると可能な対応が無くなるというような考え方で、対応可能な状況だけを設定してはならない。

検討した状況変化に対するリスクの考え方は、次回の発信で整理する。


想定すべき組織の内外の状況を知れ

このような状況変化を考慮する際に以下の視点が必要となってくる。

  1. 組織の内部状況の変化
    • 組織員の心身の健康状態
    • 必要となる業務種別、量と納期(通常時業務と緊急業務)
    • 使用できるリソースの変化(資金、人員、設備、機材、技術等) 等
  2. 組織の外部状況の変化
    • 行政の動向
    • 社会インフラサービスの動向
    • 民間企業の動向
    • 医療関係の備品・機材の充足状況
    • 業務に必要な備品・機材提供の状況
    • 社会ニーズの変化 等

組織の優先順位の変化を想定せよ

状況の変化に従って、組織の優先順位も異なってくる。現在対応の前提としている組織の優先順位が、その状況にふさわしいかを検討する必要がある。

危機時の対応の優先順位や方針は、一度決めれば最後まで有効とは限らない。その危機の状況やリソースの変化によって優先順位や対応方針も変化する場合がある。正確に言えば、優先順位が変化すると言うよりも、対応の必要性の重みや実行できる対策内容が変化することになるが、組織を運営する場合は、状況の変化にしたがって、その組織が重視している事項や対応方針が切り替わったということを組織と共有する必要がある。



←前の記事へ(第2回) |  次の記事へ(第4回)→





特設サイトトップページに戻る