リスク共生社会創造センター

2020年4月15日

リスク共生の視点から見た新型コロナ対応

(第2回) 危機時におけるリスクマネジメント その1
何を今の着目リスクとして考えるか
~多様なリスクを検討し、対応を判断した仕組みを説明せよ~

横浜国立大学 IASリスク共生社会創造センター
客員教授(前センター長)  野口 和彦

リスクマネジメントは、本来リスクが顕在化する間に実施する対応である。そういう意味では、新型コロナ対応に関するリスクマネジメントは、リスク評価・対応に関して、その不十分であったことが明らかになった言える。この点でも、現状が一段落したら、総括しなくてはならないが、危機管理に移行した現在でもリスクマネジメントを有効に活用することができる。

危機は変化する。そういう意味では、将来をどのようにみて、どのような判断を行うかという視点では、リスクマネジメントが活用できる。ただ、危機時には、状況の変化が激しく、施策決定までの時間が短いという特徴がある。この状況を前提として、新型コロナ対応へのリスクマネジメントの適用を試みる。


リスクを特定する危機状況を共有せよ

まず、リスクマネジメントで大事なことは、何をリスクと捉えるかである。危機時には、顕在化している事象に対して、注目が集まりその対応に対して主力が注がれていくが、社会の運営には多くの要素があり、着目している課題への対応が他の要素に対して悪影響を与えることがあるのは、周知の事実である。現状でも、ある施策が提示されると、その意見が専門家の検討を踏まえたものであっても、賛同意見と共に多くの反対意見が出される。社会運営と言っても、その視点は1つでは無い。何が対応すべき課題かということが1つでは無いからである。

一方、多くの立場を勘案して、思い切った対応を打てないと危機は収束しない。

この対応のバランスをどうとるかは、現状をどの様に見て、どのような状況を何時までに実現しようとするかという危機の状況と対応結果の目標によって異なる。

危機時の施策を打つ前提を、社会として共有することが重要である。


検討しているリスクを体系的に説明し現状で重視するリスクの考え方を明示せよ

危機時の対策の有効性を確保するには、市民の協力が不可欠ではあるが、危機時方針の受け入れを市民一人一人の意識の高さや同調性に期待するのでは、影響が長引いたり対策効果が見えにくくなったりすると対応が支持されなくなることになる。危機時には、多様な意見に耳を傾けると共に、その多様な意見をどう整理して、対策を決定したかを説明する必要がある。

危機時の対応を説明するときは、その方針に対して社会が受けいれることが重要である。そのためには、多様な視点でリスクを検討していることを明らかにして、危機対応に検討漏れが無く、体系的に説明を行い、対策の検討経緯やその判断が支持されることが必要となる。この状況を危機時に実現するには、難しい側面も多いが、危機管理責任者は、如何なる時も危機管理の対策の効果と対策がもたらす影響を知った上で、その時々の社会状況に応じて対策を判断していかなくてはならない。そして、その対策を実施するに際は、その時々に対応を優先すべきリスクの考え方を明確にして、その対策の内容だけで無く、その必要性と意義をしっかりと説明すべきである。



←前の記事へ(第1回) |  次の記事へ(第3回)→





特設サイトトップページに戻る