リスク共生社会創造センター
Q&A
 

2016年12月5日に開催いたしましたシンポジウム「リスク手法の有効性と課題を考える」において、皆さまから多くのご質問・お意見を頂戴いたしました。ここに皆様からの「ご質問に対して回答」と「シンポジウムに関するご意見・ご感想」を掲載いたします。

質問一覧 (ご意見・ご感想はこちら

Q1
リスクの定量性評価について。絶対値に大きな意味を持たせてはいけなくて相対値と価値があるのであれば、世間でよくなされる異なるリスク比較(タバコ、ダイオキシン類)をどの様に扱えばよいか、もっと言えば、10-6という値を比較して意味はあるのか?リスク目標は内側から設定をされるものか。

A1

定量化されたリスクの絶対値はその値の不確かさ(不確実さ)を考慮に入れて使用すると、評価に有効な指標になります。 例えば不確かさの幅が小さいリスクの定量評価は、分布の中央値を使用しても有効であり、不確かさ幅の大きい定量化結果は不確かさの分布を含め意思決定に活用されます。相対的な比較の観点では同じ単位が必要で、例えば重要なリスク指標である「死亡リスク」の比較は有効なリスク評価となります。

参考意見 ①
リスク目標については、ALARPの考え方では2つあり、一つ目は必ず達成しなければならないもので社会全体として外側から設定されます。一方より低リスク側の目標である二つ目については実施者を主体として内側から設定されるものと思われます。

参考意見 ②
現在用いられている原子力分野での議論を申し上げると、放射性物質の放出で受ける影響を、遅発性がんによる死亡も含めて発電所の敷地境界の住民が受ける影響を「死亡の可能性」としてリスクも定めている。
それを10-6の発生確率として安全の確保を求めている。通常の死亡リスクの2桁小さいものとしている。個人的には、この値は他の要因による死亡リスクと比較することは十分に可能と考えます。この安全目標は、国の委員会の検討で定められたものであり、福島の事故を受けて、見直しの機運があります。
既に、規制委員会では、放射性物質の放出そのものを定めようと例示されたのが、すなわち、セシウム137の放射性物質の放出量を100テラベクレルとして、その放出の可能性を10-6とするものであります。これは、福島での放出量の約百分の一であり、結果として示されている放射線の分布に対しては十分に小さいものと言える。 これらの安全目標の定め方についてですが、個人的な見解を述べると以下のように考えます。本来は、他の基準でも決められていると同様の方式が適切であろうと考えます。国民が求める適切な基準を決めることがまず必要と考えます。それは、適切な利用を考えての基準とすべきで、どの程度が社会が求める水準とすべきか、という判断をまず社会(国が代行するか)が行うことが必要であると考えます。それは他のリスク要因と比べて、適切なものを定める必要があると考えます。その上で、それを基に規制は事業者が満足する運用をしているか、を確認する役割を持つものと考え、規制が考える管理のための基準を設定しなければなりません。それは、当然、明確な基準とすべきで、それを基に事業者は、自ら考えて満足する基準を自らの組織で運営するものとして設定する。それは当然、国民が求める目標を十分に満足すべく、より高い目標と言えます。(最後の質問8と合わせて考えてください)


Q2
水素タンクは70MPaである。これが直接爆発することはないと思うが、疲労きれつの発生などにより、リークして地下駐車場内に充満した場合には、水素爆発の危険があるのではないか。

A2

水素システムの事故として、閉空間に溜まった漏えいしたガスが着火・爆発する事故は注意すべき事故であり、安全性の検討において重要な検討事項になっています。


Q3
電車への飛び込み、台風の時期の行方不明者、高齢者の運転免許の返還など明らかな社会的リスクを個人責任に任せる日本で、リスク評価及び改善が一向にされない課題をどう考えられるか?またどう行動されるか? 

A3

リスクに対する判断・対応は、国等の規制等で決められるものと個人や組織の判断・対応に任せられるものがあります。社会に重大な影響を及ぼすリスクに対しては、国等によって方針が決められることが一般的です。しかし、リスクに対する対応を全て国等に決めてもらうという考え方は、個人が自分で考え対応を行うという能力を弱くする一面もあります。
また、リスク対応の選択は何か目的をもった行動に対してなされるもので、その行動に伴う利益およびリスク、またその行動を行わなかったことによる利益(不利益)およびその際発生するリスクを総合的に考えて対応を考えることも重要になります。


Q4
H2以外/定量化は人的もインフラも経済もすべて金額でモノサシが可能では?

A4

リスク評価においては、多様な種類のリスクへの評価が必要になりますが、階層分析法等の手法により価値の定量化を行うことによりリスクの影響を金銭等の一つの指標に変化することで、種類の異なるリスクの比較や総合評価を行うことも可能になります。


Q5
リスク評価には、残余リスク(許容できないリスク)の検知、抽出、評価、対策とPDCAが重要だと思います。水素エネルギーに係る定性的評価においてどう考えますか?

A5

残余のリスクを常に確認して、その状況の十分性を検討することが大切です。 定性評価といっても、そのリスクの存在を明らかに手その対応を検討するだけでなく、対応前のリスクと対策後のリスクの変化を検討することはできます。しかし、重大なリスクに関しては、評価において何らかの定量化を図ることが必要であると思います。
また、定量評価の際に不確かさが大きな場合がありますが、不確かさの状況もそのリスクの特徴で有り、不確かさは誤差ではないことに注意が必要です。


Q6
リスク評価の使い方に関して国が一方的に決めた基準を満足するかどうかを確認するためだけに使われがちな現状を、どの様にリスク評価のあるべき姿に変えていくかの戦略があれば教えてください。

A6

まず、規制とリスク評価の位置づけの違いを認識することが大事だと思います。現在、工学システムの安全に関して遵守すべき重要な事項は、規制によって定められています。しかし、規制の制定は、対象とする工学システムに関して多くの検討がなされた上で定められていますが、工学システムに採用される技術の進展や機能の高度化・複雑化を常に規制に反映することは難しい状況です。したがって、規制を遵守していれば事故が発生しないことが保証されているわけではなく、事故の発生が免責されるわけでもありません。
社会や企業が新たな工学システムを高度化し、社会の豊かさや企業の発展を目指す限り、社会における必要条件である規制を遵守していることに満足するのではなく、活用する工学システムの特徴に応じ、その開発・運用者は、自ら安全目標を設定しその達成を目指すことが望ましいと考えます。この安全目標の指標として、リスクを用いることが進められようとしています。
また、今後の社会に投入される工学システムの活用による豊かな社会構築のためにも、安全に関する規制と安全目標の在り方を行政・企業・市民で共有し、安全に関する新たな社会の仕組みを構築していくことが望ましいと考えます。
さらに、リスク評価は、分析した対象のリスクに対してリスクに関する情報が得られるものであり、ある分析によってリスクの大きさを評価した場合は、最低でもそのレベルのリスクが存在するということしか言えないということを認識して、リスク評価を活用すべきと考えます。


Q7
リスクアセスメントは定量評価をするべきで、定性評価は不十分と考えていたが、今日の議論を聞いてどちらにもメリット・デメリットがあり、改善するポイントがあることがわかった。そうするとシナリオをもれなく抽出することが必須だが、災害テロなどの想定外事象をどこまで想定すべきか考え方をお聞かせください。

A7

リスクを特定するということは、そのリスクシナリオを全て洗い出すことではありません。まず、そのような可能性があることを認識することが大事です。工学リスクの分析では、原因系から分析を始めることが多いのですが、この方法は分析したシナリオの対策を考える場合は大変有効ですが、原因を見逃すと想定外のリスクが発生しやすいという課題もあります。
想定外を少なくするためには、まず何が起こると困るのかという望ましくない結果の整理から分析すべきリスクを特定していけば、想定外は少なくなります。 また、リスクアセスメント(あるいはリスク分析)は出来るところから、出来る方法でやることが肝要です。想定外は考え出したらきりがない側面がありますが、想定したら必ず対策が必要とするのではなく、色々と想定し費用対効果も考えながら現実的に達成可能な対策を模索(ALARPの考え方)すること、現時点では対策が不可の結果になったとしても検討した情報は今後の継続的安全性向上のために残すことが重要かと思います。


Q8
資料:"リスクとは"(宮野講師)AlARP図があり、点線(赤)が入っています。ところが、そのレベルについて説明がありませんでした。
安衛法第28条の2/同57条の3関連でリスクアセスメントの実施を担当する実務者はそのレベルがわからず困っています:
危険性又は有害性等の調査等に関する指針(リスクアセスメント指針)施行通達10(2)項 )には“指針10(2)項 は…“合理的に実現可能な 程度に低い”(ALARP)レベルにまで適切にリスクを低減するという考え方を規定したものであること” このように、上記の規定により出された二つの指針には、具体的な算出手順がなく、実務者泣かせとなっています。
現在、厚生労働省が安衛法第57条の3関連の化学RA普及のキャンぺーンをやっていますが(神奈川県では労働局主催)、某委託事業者 派遣の講師に質問しても、まったくわかっておらず、低減目標なしのRAの解説をやっている有様です。
貴センターは、中立の立場からぜひ本件の啓蒙を行っていただきたく、お願いします。

A8

国民(政府が管理するもの)が求める基準が、受容されない領域を超えたところに「受容される基準」として目標が設定されているもので、それを満足すべく事業者(運用、製造を行うもの)がそれぞれの判断で考えた目標を設定していると考えます。一般に、事業者が目指す目標、基準は陽には見えてこないもので結果として、規制で求める基準を満足する形で表れる、と言えます。そのように運用されていることを示しているのが、この図です。(最初の質問1と合わせて考えてください)図1
安衛法を見る限りでは事業者が実施する指針を行政(厚労省)が定める形になっており、その指針がALARPの考え方だけで具体的な内容がない状態になっていると理解しました。ALARPの考え方は、右図に示すように最低限達成しなければならないもの(目標値A)と、これ以上はリスクが無視できる領域(目標値B→質問の低減目標)の間となります。化学物質などで発がん性等の閾値が明確になっているものは、その値が目標値Bになるかと思いますが、これらは時代と共に変化するものであり、また日本学術会議で取りまとめられた「工学システムに対する社会の安全目標(2014.9)」では、“安全目標は時代と共に変化するという認識に立ち、理想的な社会状況を目指した理念的なものではなく、現代社会において実現が可能なものとする。なお、実現可能ということは、現状追認ではなく、今後の努力により技術的にも経済的にも達成可能なものという意味である。”と提言されていることを踏まえると、低減目標は目標値A(規制値等)をクリアした上で技術的、および費用対効果的に達成可能と思われる現実的な値を事業者が決めることになるかと思います。なおこの低減目標は技術力の進歩、リスク源に対する知識の充実により適宜見直されるものとなります。



◆ご意見・シンポジウムに関するご感想
  • 先日トヨタとホンダのH2車に試乗しました。習近平、トランプへのおみやげにすればと思いました。当面PDCAをキッチリやること。(男性 86才)
  • 社会リスクを考える上での現状や課題について理解できました。ありがとうございました。(男性 23才)
  • 技術の普及は早いが理解が得られるには時間がかかる。 (男性 34才)
  • 燃料電池車は必然だと思っている (男性 63才)
  • 真の低炭素H2であるならH2社会とすべき。(男性 51才)
  • 定量評価は基準により大きく異なるので、一部の評価には非常に有効だが、あまり信用してはいけないと思える。定性評価を充分に実施し、同一基準で評価できる項目についてのみ定量評価すべきと感じた。良く耳にするシミュレーション結果等もそうだが、基準を何にとるかは非常に重要なことに注意すべき。(感想です。)(男性 65才)
  • 別途、環境リスク(社会、自然)も取り上げて欲しい。都市工学的取り組みをお願いしたい。(男性 74才)
  • 日本ではなかなか根付かないリスク論をテーマにした本日のシンポジウムは興味深いものがあった。(男性 66才)
  • 本日のシンポジウムは各講師の方々がとてもわかりやすく説明していただけたことに感謝します。また分野横断という試みも非常によいと思います。問題意識が共通だったかについては課題と思います。(男性 64才)
  • リスクを知りながら色々な技術を開発・使用していくことになると思うが、リスクを分散するためにも多様な技術が存在することは良いことだと思う。(男性 61才)
  • リスク共生の考え方が一般的に普及する必要がある。専門家のみでの議論では世間一般の満足を得ることは困難な時代。利便性とリスクの共生をもっと気運を高めて頂きたい。産(製造)・官(規制側)も巻き込んでやって欲しい!(男性 62才)
  • 燃料電池車や電気自動車がもっと普及すればよいと思う。水素エネルギーの利用は変換効率も重要だと考える。本人のシンポジウムではリスクをどこまで受容するかだと思っていたが、どれを選択するかが重要だとよくわかった。(男性 56才)
  • 燃料電池車にH2ではなくLPGは使えないか?ガソリン代替としてのLPG車の普及はないのか(タクシーのみではなく)(男性 71才)
  • 政府の水素エネルギー社会創成にひきずられて水素安全へと誘導される方向にあるのではないか。高圧ガス保安法、消防法は本当に必須の要求をしているのか。リスクの点から議論して欲しい。(男性 63才)
  • ステーションだけでなくキャリア全体と車運用を含めた全体のリスク評価はどうなっているのだろうか。今日の話だけでは分からず今後の課題としてもよい。今日のシンポ(全体)は良かった。大変勉強になりました。(男性 72才)
  • 石田様のプレゼンがとても勉強になった。社会リスクと工学的リスクのとらえ方や今後どのように社会リスクを取り入れたリスクマネジメントが期待できるのか・・・という点でも是非このようなシンポジウムをお願いしたい。(女性 29才)
  • これらの本格的な水素社会に向けて、開発段階・設計段階から社会的受容を主としたリスク評価を行うことが重要と感じました。(男性 45才)
  • リスクには好ましい事象と好ましくない事象があり、いいところ取りはできないと知った。定量的な議論に加え、人の価値観を大事にして、新しい技術の導入等を考えていくべきだと思った。(女性 29才)
  • 早く水素社会になって欲しい。(男性 69才)
  • 重要な指摘として、間接影響の抽出を影響を受ける側による横断的取り組みを至急進めて欲しい。Backcast手法、AI、Bigdataを使うのもよい。最終的な最大の影響として、ある地域の全員避難を想定するとよい。(リスク影響の一般化!)(男性 58才)
  • 先端的なお話しを伺え、大変良かったです。ありがとうございました。(男性 30才)
  • 燃料電池車、水素エネルギーについてニュースや宣伝であまり見ないようなきがするので、まだそこまで普及しておらず高価なイメージがある。ただ海外情勢に左右されなそうで今後の利用に期待を持てる。(女性 23才)
  • 水素ではないが、科学者はどこまでも追及が必要であろう。一方社会目標は自治体のTOP、国のTOPが決めること。そのための議会が大切。政治家にどう知見をしらしめるかその工夫が必要と考える。(男性 66才)



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